トランヴェルの魔女 12話

第1章

「まて逃げるな!肉!」

誰かが私を追いかけてくる。

「どんなに逃げようと時間の無駄だ!」

(近づいてる……追い付かれる!?)
「た…助けて!」

ガン!

私は魔物に押し倒された……。

「逃がすわけないだろ」

私は振り向く。そして目を疑った。
そこには|私《・》がいた。
私を追いかけ、押し倒したのは私だったのだ。

そして次の瞬間、私は燃やされた。

ゴオオオオオオオ!

(熱い……痛い……!)
お腹から血が溢れてくる……。

燃える……。
全てが……。

「死に絶えろ 」
「いやあああああああああああ」

叫びと共にララは目を覚ました……。

ララ
「夢……?」

気がつけば私は見覚えのない部屋にいた……。
周りを見渡す限りどうやら診療所にいるようだ。
誰かがを私をこの部屋まで運んでくれたのだろう。
私はベッドから起き上がる。
すると、自分の腹が血の色に染まっていたことに気づく。

ララ
「夢じゃ………ないか」

昨晩の悪夢は残念ながら夢ではなかった。
村が焼かれたことも家族が殺されたことも……
そして自分が魔女になったことも……。

ララ
(何故こんなことになったのだろう……家が焼かれ、家族が殺され……)
(今でも覚えている……サジの断末魔を…今でも覚えている……村が焼かれていく様を…)

(それから私は怒りと共に魔物たちを焼き殺したんだ…)

ガチャ

いきなり部屋のドアが開かれた。
そこにはリリィが立っていた。

リリィ
「お目覚めね」

リリィはドアを締め、ララに話しかける。

リリィ
「体調はどうかしら?」

ララ
「……」
ララは自分の腹を見つめながら答えに戸惑っていた。

リリィ
「お腹……大丈夫?」

ララ
「……ええ…大丈夫…です」

リリィ
「そう…よかった」
リリィはベッドの横にあるテーブルに水とパンを置いた。

リリィ
「お腹すいたでしょ?ここにお昼ご飯置いとくね」

ララ
「…ありがとう…ございます…」

リリィがその場を立ち去ろうとしたその時、
ララはリリィに尋ねる。

ララ
「あの……村はどうなったのですか?」

リリィ
「……」

ララ
「村のみんなは……無事ですか?」

リリィ
「何人か生存者はいるわ……でもほとんどの人が重症よ」

ララは顔を下へ向ける……。

リリィ
「でも大丈夫…今王宮から魔法使いが応援に来てくれてる…きっと皆助かるわ」

ララ
「よかった……」
ララは一安心したのか、肩からスーッと力が抜けていく。

リリィ
「疲れたでしょう…ゆっくり休んで頂戴…またここに戻って来るから」

ララ
「わかりました……」

リリィはララに微笑みかけ、部屋から出て行った。

ララ
「……これからどうなってしまうんだろう……」
ララは今後に不安を抱えながら再びベッドに横たわることにした。

リリィがララの部屋から外に出た矢先、そこにはドラフが立ち尽くしていた。
どうやら部屋の前でリリィを待っていたようだった。

ドラフ
「どう…?例の患者の容態は?」

リリィ
「ええ…特に問題はないようです」

ドラフ
「ふむ……」
ドラフは口元に手をやり、唇を撫でている。
「あの娘だけなんですよ……無傷なのは」

リリィ
「一応腹部に血がついていたので調べてみましたが特に傷はございませんでした」

ドラフ
「返り血とも見れない……しかも服だけ切り裂かれた跡があり、腹部に傷はない……彼女は回復魔法が使えるのかね?」

リリィ
「いえ……国のデータベースで調べた結果、彼女にはそのような経歴が見当たりませんでした…町商人としてのキャリアしか踏んでいないはずです」

ドラフ
「ふむふむ……リリィ君…念のため彼女の魔力を計測してくれない?」

リリィ
「魔力計測ですか……?」

ドラフ
「そうそう……それ測っといて…もしかしたら回復魔法を使った形跡あるかもしれんし」

リリィ
「承知しました」

リリィはドラフに一礼し、外の馬車へ戻っていった。

ドラフ
「さてさて……そろそろガゼルさんへ聞き込みへ行きますか」

ドラフはガゼルのいる部屋へと入っていった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました